人文学科の柴田(美術実習)です。
「アート入門」の第2弾は、西洋美術史の剱持 あずさ先生です。
19世紀初めに大きな転換点を迎えた西洋美術、剱持先生はその前半、わけてもルネサンス絵画を専門にご研究されておられます。「西洋美術史入門」ということで<西洋絵画を読みとくって?>、<明暗と空間>の2回の講義をうかがいました。
1回目の冒頭「美術史とは?」のところで、テキスト的には『造形作品の歴史=人間の表現に関わる歴史/文化/精神をひもとく』ではあるのですが、先生自身がこれまで研究されてこられたからこその考え、『年月を超えて伝えられてきた作品に「今」むきあって「今」感じること、意味や価値を見出す』という貴重なお話が! 古の昔に確かに誰かの手によって生み出された作品が、今目の前に存在している、そのことにぐっと感慨を覚えるのだというくだりは、制作者である自分にとっては大変うれしい言葉でした。
さて、ことに19世紀の大エポック以前の西洋美術では、その<主題>を知っているかどうかで作品の理解が全く違ってきます。いわゆる歴史画といわれる、神話・宗教・寓意・歴史・文学などをテーマにした絵画について例を示しつつ解説くださいました。フラ・アンジェリコの「受胎告知」ではサンマルコ寺院にどのように存在しているものなのか、絵画がおかれる「場」の重要性が紹介され、昨今ひたすら美術館やギャラリーの「壁」に並べられることが多くなってしまった「絵画」を考え直したいと気づかされました。
2回目は、西洋絵画の表現の核である「明暗と空間」です。
モチーフとしては同じ場面をとりあげてはいても、<テンペラ画>と<油彩画>では風合いに大きな違いがあることを、イタリアのテンペラ画とネーデルランドの油彩画を比較して解説くださいました。カメラなどの画像に慣らされている現代人には、確かに油彩画の方がリアルな印象かもしれませんが、よく見れば人体のバランスなどテンペラ画の方が優れていたりします。どっちが「リアル」なのでしょう?また、よく日本画の人がイタリアに留学に行って西洋の絵を勉強したりすることも寡聞しますが、テンペラやフレスコには、日本画の画材と通じるところがあるのかもしれません。
そのほか、西洋絵画の光と影(明暗法)や遠近法/透視図法の話、そして古代ギリシャの「斜めの視点」がすでに奥行きを意識したものであるなど、とても興味深いお話の数々でした。
剱持先生のご講義は、西洋美術の単なる知識なのではなく、「作品」や「作者」に対する愛情が根底にあるのでありました。