2025年5月28日水曜日

【人文の資格課程】教職についてのご紹介

人文学科の特徴の一つである、資格課程についてご紹介します。今回は教職課程!

本学で取得できる教員免許の種類は、以下のとおりです。

・中学校教諭一種免許状  国語   

・高等学校教諭一種免許状 国語

・高等学校教諭一種免許状 書道

・中学校教諭一種免許状  社会(文科省に申請中)   

・高等学校教諭一種免許状 地歴(文科省に申請中)

(※美術科は、令和7年度入学生より募集が停止になりました。)


全国的に教員不足が叫ばれている中で、実は跡見の教職課程では、教員を希望する学生が、むしろ年々増え続けています。真面目で優秀な学生がたくさん集まっており、実際に教職に就いている人も少なくありません。

【教育実習受講者数】

 ・令和5年度:13名(国語10名、書道0名、美術3名)

 ・令和6年度:26名(国語18名、書道4名、美術4名)

 ・令和7年度:29名(国語19名、書道3名、美術7名)

その秘密は、充実したカリキュラムと指導体制にあります。教職課程では、関係教員の力を合わせた手厚い指導がおこなわれています。教職課程に特化した説明会やオリエンテーションも毎学年(3、4年生は年2回)実施されており、学生たちのモチベーションを高めます。

1年生向けの教職課程ガイダンス)

カリキュラムの面では、12年次(前期課程)において教職科目(「教職論」、「教育心理学」、「教育とICT活用」など)を中心に学びます。

近年、教員採用試験は3年次に受けることができる前倒し選考が行われていますが、この科目配置がその受験に有利にはたらいています。そして、34年次(後期課程)には専門科目が多く配置されており、教員として必要な専門的知識をしっかりと身につけながら、教科の教育法などを学び、実習へと出ていきます。

(後期課程「国語科教材論」の様子)

また、授業以外の場においても、小学校~高等学校の授業見学を全員参加でおこなっているほか、現場の校長先生や教育委員会採用担当者をお招きしての講演会も実施。「現場」を知り、どんな力が必要なのかを考える機会が充実しています。

 

跡見には「教育学部」はありません。それでも、採用試験では高い合格率を誇っています。

 例:令和6年度教員採用試験等結果報告(令和7年度採用)

(1)  一次試験合格者数:3年生15名(受験者数24名)*前倒し受験

               4年生10名(受験者数25名)

              合計:25名(国語科17名、書道3名、美術科5名)

(2)  教職に就いた合計数:8

(3)  大学院:2

 筑波大学大学院(書道科1名)、跡見学園女子大学大学院(美術科1名)

 

残念ながら不合格だった履修者も、教職課程で身につけたコミュニケーション力や分析力、プレゼン力などの様々な経験を活かして、自分の道を切り開いています。中には、社会人になってから再受験する人も。

卒業時には、「大変だったけど、教職がんばってよかったです」と笑顔で。

(卒業式、教職主任の鈴木芳明教授を囲んで)


人文学科に配置されている多様な分野とも行き来しながら、横断的に学ぶことができるのも特色です。

履修する単位が増えるので大変に感じることもあるかもしれませんが、その分しっかりと将来に役立つ資格を得ることができます。

 ということで、跡見の教職課程についてのご紹介でした。次回は学芸員課程を紹介します!


2025年5月23日金曜日

【授業紹介】「ワークショップで学ぶアートA」

令和7年(2025年)度からのカリキュラムでは、全学共通の教養科目として「芸術」分野が新設されました。

跡見学園女子大学の創立者である跡見花蹊が書画の学びを重要視したことを受け継ぐ、「跡見らしさ」があらわれている注目ポイントの一つです。

その中でもユニークなのが、「ワークショップで学ぶアート」です。人文学科の茂木一司先生と柴田眞美先生が担当されています!

今回は春学期ご担当の茂木先生から届いた授業の様子をご紹介します。


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「ワークショップで学ぶアートA」では、協働で学ぶ、いわゆるアート・コミュニケーション学習=民主主義のレッスンをいろいろやっています。不正解がなく、相手といっしょにやることで、自分とは何が自然にわかるようになっていきます。


【第3回】Mondrianワークショップ

ピエト・モンドリアンの「ブロードウェイ・ブギウギ」(1942−43)をモチーフにした、個人の表現がリミックスされて社会化される共同画ワークショップ。

音楽をかけながら、回転寿司のように踊ったり、描いたり、見たりしながら、自然に相手とつながっていってしまうことを学ぶ。個人の表現が社会化されていくプロセスを視覚化する。



【第4回】シアターゲーム 

ゲスト講師:柏木陽先生(NPO法人演劇百貨店)https://engeki100.net/aboutrus/prof/kashiowagi/

演劇の基礎トレーニングであるシアターゲームを改良して、即興で身体的な表現遊びをいろいろやってもらいました。

2人と3人とか4人で、何かになってみます(自転車、顕微鏡などなど)。そこから動きを加えてさらに表現を深めていきます。


アートカードを身体で表現するというのもやりました。最後はできた身体のかたちに台詞をつけて、即興演劇化!


【第5回】 バルーン・ドームづくり1日目

ゲスト講師:塩川岳(しおかわたけし)先生

https://www.facebook.com/kazumogi

塩川岳さんをお呼びして、「バルーン(エアードーム)づくり」をはじめました。カラービニール袋を裂いて、テープで貼って大きなシートをつくる作業は案外重労働ですが、汗をかくのはいいこと!体育館はいっきにカラフルに!とりあえず、今日はここまで!!


【第6回】バルーン・ドームづくり2日目

ゲスト講師:塩川岳(しおかわたけし)先生

先週つくったビニールシートを重ねて円形に整えてカット。縁を空気が漏れないように細かくテープでとめていきます。単純だけど、根気がいる仕事……。その上にカッティングシートとマッキーで装飾…子どもに戻ってお絵かきをするとのびのびとして、いい表情になってきました。最後は、送風機で空気入れ。大きな機器を買ったので、5分程度で大きな風船ができあがります。

入り口を切ってつくって、中に入って感動! 描いた絵が星座のようになって見え、プランネタリュームのようだと感想が出ました。
ワークショップは参加協同型学習です。お互いが自分の役割を自然にこなしていけるように積極的に「参加」の仕方を考えながら学ぶ、いわば民主主義のレッスン。社会構成主義的な関係性の変化を楽しむ余裕がでてきたら、あまり教師のコントロールはいらなくなる。教えない教育の実践です。
お疲れ様…塩川さんにお礼!



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「芸術」と言われるとハードルが高く感じてしまう人も多いかもしれませんが、表現の方法が本当に自由であることを感じ、自分を見つめるきっかけにもなる授業です。

全学共通科目ということで、他学部他学科の学生同士が繋がる機会でもあります。

人文学科には、ここからさらに創作を究めていける実習科目や、文化・思想に目を向けていく専門科目など、様々な角度から「芸術」を知る授業が配置されています。

人文学科の科目についてはこちらからご覧いただけます。また、令和7年(2025年)度カリキュラムについても、こちらからぜひご確認ください。


2025年5月17日土曜日

【新刊紹介】『アンドレ・フェリビアン「王立絵画彫刻アカデミー講演録」註解』

人文学科の栗田(西洋近代美術史、博物館学)です。

このたび、共編訳者として『アンドレ・フェリビアン「王立絵画彫刻アカデミー講演録」註解』を中央公論美術出版から刊行することができました。公益財団法人鹿島美術財団の「美術に関する出版援助」を受けての出版で、助成に心より感謝申し上げます。

もう一人の共編訳者は慶應義塾大学教授の望月典子氏で、『ニコラ・プッサン: 絵画的比喩を読む』(慶應義塾大学出版会)のご著書で知られています。共訳者には、それぞれフランス近世美術の研究で学位を取得された倉持充希、太田みき、福田恭子、小林亜起子、船岡美穂子の各氏に加わっていただきました。この講演録はフランス美術の最重要文献の一つで、1740年には英訳が出ています。近年関心が高まっており、2001年には独訳が、2020年には英語の新訳が出ています。

 フランスの王立絵画彫刻アカデミーは1648年に設立されたもので、ルイ14世の親政開始後の1663年に王室の財政的な支援を受けるようになってその活動が活発になりました。

重商主義政策で知られる太陽王の重臣コルベールは、王室の名声を高めるべく文化政策にも力を入れ、美術アカデミーにも様々な指示を与えました。その中の一つが王室のコレクションを活用しての講演会で、後進の育成に役立つ上達の秘訣をまとめさせようとしました。

講演録の編纂を任されたのが国王歴史編纂官のアンドレ・フェリビアンで、手工的技術としてさげすまれてきた絵画・彫刻の技芸を知的営為としての自由学芸に格上げするために展開された講演録の「序」の議論は有名で、とりわけ歴史画を頂点とする「ジャンルの序列」の理論はその後のフランス美術史の展開に大きな影響を及ぼしました。

 講演会が開始された1667年には7回が開催され、古代美術からは彫刻「ラオコーン」、前世紀の美術からはラファエッロとティツィアーノとヴェロネーゼが、当代の美術としてプッサンが取り上げられました。「序」には翌年の第1回講演会の内容に言及があるので、本書では補遺として第8回講演会も加えました。

各翻訳には詳しい注釈と解題を付し、読者の便宜を図りました。また解説として小生の「アンドレ・フェリビアン『王立絵画彫刻アカデミー講演録』(一六六八年)」と望月氏の「アンドレ・フェリビアンと美術批評」という二つの論考を掲載し、本書の意義が浮かび上がるようにしました。また、講演録の理解の一助となることを念じて、巻末には付属資料として美術アカデミーの規約集の翻訳を掲載しました。

 各講演を担当したのは国王首席画家シャルル・ル・ブランをはじめとする美術アカデミーの画家や彫刻家たちで、実制作者ならでは観点から多面的な分析が試みられています。毎回、基調講演の後に討論が繰り広げられており、当時の芸術家たちの間でどんなことが関心の的であったかがわかります。

 あるフランス語読書会でこの講演録の翻訳に取りかかったのは約25年前に遡りますが、長い中断を経て、新たに優秀な翻訳チームを組んで翻訳を完成できたことは感慨深いです。本書を通じて日本におけるフランス近世美術の理解が少しでも深まっていくことを祈念しています。



書誌情報

『アンドレ・フェリビアン「王立絵画彫刻アカデミー講演録」註解』

(共編訳:栗田秀法・望月典子、共訳:倉持充希・太田みき・小林亜起子・福田恭子・船岡美穂子)

中央公論美術出版、2025年(ISBN 978-4-8055-0997-5)

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