ごきげんよう。
人文学科には様々な先生方がいらっしゃいますが、その中でも図書館に関することを専門とされている一人が、水谷長志先生です。水谷先生は「図書館情報学」を専攻されていて、MLA連携について研究されています。本学にいらっしゃる前は、東京国立近代美術館に勤務されていました。
MLA連携とは?と思う方も多いかもしれません。MLAは「ミュージアム(Museum)」「図書館(Library)」「文書館(Archives)」の3種類の施設を指していて、それぞれが協力して、知識や情報をより多くの人に届けるための取り組みを「MLA連携」と呼んでいます。
いずれも資(史)料を保存し活用するという点が共通していますが、多くの人がイメージするように、役割は少しずつ異なります。
これらが連携すると、たとえば「博物館で見たものについて図書館で調べる」とか「歴史の本を読んで、その時代の本物の文書を博物館や文書館で見る」などのように、知識をもっと深めたり新しい発見をしたりすることが、よりスムーズに行えるようになります。
また、デジタルアーカイブの作成も重要です。最近はインターネット上で見ることのできる資料も増えてきました。身近なところでいうと、国立国会図書館のデジタルコレクションや次世代デジタルライブラリー、国文学研究資料館が構築する国書データベースなどは、その流れにあるものですね。
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さて、そんな水谷先生が3月12日に新しいご著書を出されました。
『ミュージアムの中のライブラリでアーカイブについても考えた:体験的MLA連携論のための点綴録』* 樹村房、発売日:2025/3/12、228p. ¥3,960 (税込)
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MLA連携は3つの館界にあって,その呼称・考え・課題が共通されて久しい。そもそもこの三者の連携についての議論は,1994年にアート・ドキュメンテーション学会(当時,研究会)が国立国会図書館において創立5周年を期して開いたシンポジウム「ミュージアム・ライブラリ・アーカイヴをつなぐもの―アート・ドキュメンテーションからの模索と展望」に始まる。本書は,その企画・司会を担った著者が東京国立近代美術館という館の屋根の下でアートライブラリとアートアーカイブを構築した三十余年の軌跡を点綴したものである。
*本書の出版は,跡見学園女子大学学術図書出版助成によるものです。
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[主な内容]
序 ミュージアムの中のライブラリでアーカイブについても考えた―来るべき「博物館情報・メディア論」への助走として
【第1部 ミュージアムの中にライブラリを開く】
第1章 ミュージアム・ライブラリの原理と課題―竹橋の近代美術館で学んだ5つの命題から
第2章 東京国立近代美術館本館の情報資料活動
第3章 第1部のための補論
【第2部 アート・ドキュメンテーションとMLA連携】
第4章 アート・ドキュメンテーションとMLA連携―語の定義の試み
第5章 極私的MLA連携論変遷史試稿
第6章 MLA連携のフィロソフィー―“連続と侵犯”という
第7章 MLA連携―アート・ドキュメンテーションからのアプローチ
第8章 第2部のための補論
【第3部 アート・アーカイブ】
第9章 アート・アーカイブを再考するということ―「作品の「生命誌」を編む」に与って
第10章 第3部のための補論
終 章 MLAを越えて―新たな調査研究法としてのMLAからSLAへ
あとがき
索引
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素敵なお写真も拝借しました。ご著書のカバー写真も!
【水谷先生より】写真は1990年3月9日発行のColumbia University Record, Vol. 15, No. 18の一面に掲載されたもの。USIA-IVPプログラムの招聘により同大学を訪問する機会を得て,エイブリー建築・美術図書館の建築ドローイング・アーカイブ(AVIADOR: Avery Videodisc Index of Architectural Drawings on RLIN)を操作しているところ。モニターにはローマ・パンテオンの素描が映し出されている。詳しくは,本文(p. 116)および「あとがき」をご参照いただきたい。
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【水谷先生より】カバーの《ウナギツリグ》は2011年3月11日の東日本大震災で被災した陸前高田市立博物館の流出資料に一点一点紐付けされラミネートされていた収蔵品のタグである。ここにはMLAのいずれにも共通するメタデータとドキュメンテーションのもっとも貴重な礎がある(本書第5章5.「MLAの同質と差異」, p. 95)
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